先週も少しだけ触れましたが、徒花プロジェクトは現在レコーディング中なのです。今週もスタジオに籠って誰かしらが何らかの音を吹きこんでいるのです。今回、お世話になっているレコーディングスタジオはファーストアルバム「カタルシス」を録音して頂いたスタジオ、その時にお世話になったエンジニアさんともう一度作業をしています。実に3年ぶりにエンジニアさんとお会いしたのですが、元気そうで素直に嬉しかったです。メンバーの半分は入れ替わってしまったのですが、こうしてバンドが続いていることは本当に奇跡なのです。

 レコーディングスタジオは僕にとっては特別な場所。自分自身を見詰め、準備してきたものが試される精神と時の部屋のような場所なのです。「カタルシス」のレコーディング時は、誰も何もよく分かっていない中、夢中でレコーディングしたのです。分からないなりに、出来ないなりに、それでもやりたいことがたくさんあって、そういったものを解放していったのが「カタルシス」というアルバムなのです。

印象に残っているのは、録音し終わった各パートの編集作業中にメンバー全員が「貴輝、これは出来ないよ」って猛反対していたギミック(ポワゾンの最後のサビでドゥーンってなって一瞬無音になるところ)があったんだけど、エンジニアさんは「どこまで出来るか分からないけど、やってみようか」って言ってくれて、僕の意思を汲んで未熟だった演奏を最高の出来にしてくれたのです。僕はこの時に、ビジネス以上のやりとりをして頂いたなと感謝しているのです。何もよく分かっていないガキの夢想を、真剣に話を聞いてくれて誠実に対応して頂いたことが嬉しかったと今でも思い出すのです。「カタルシス」の最終調整が終わってミキシングルームで出来上がった音源を聴いてボロボロ泣いたなあ。出来上がって嬉しいのも勿論なんだけど、レコーディングが終わっちゃった、しばらくスタジオに来ることもないんだなあって思うと悲しくて。

 

エンジニアさんに3年ぶりにお会いして「あの時のアルバムはフェスとか出ると結構売れてますよ」と報告したら、「ロングセラーが大事だよね、続けるのが大事だね」と言ってくれました。レコーディングはまだ始まったばかり。歌が上手くなったところ、バンドの成長をしっかりと見せたいなあと。そしてこうしてまた一緒に作業出来るこの時間を大切にしようと思うのでした。