さて今週の徒花プロジェクトですが、お盆休みを頂いております。まあ、各メンバーそれぞれにライブなど予定はあるかとは思いますがね。今回はニューアルバムのタイトル曲「ライ麦畑で抱き締めて」について掘り下げていきたいと思います。
 この曲を書いたのは二年前の初夏くらいだったと思います。徒花キャバレー・猫とヒツジのスウィングバンドを自分で作編曲して、自分でも編曲出来るんだなっていう確信と共にマイナーキーのコアな曲を作っていったらメンバーの反応が僕の思ってるのと違っていて、腹が立っていて(苦労して作編曲して譜面まで書いて反応悪いと僕は滅茶苦茶機嫌悪い)、「どうせお前らはこういう曲が好きなんだろ、オラオラ」と思いながら、同じ日に夏の過ごし方という曲の譜面も書き上げたのを覚えています。
 僕が「ライ麦畑で抱き締めて」という曲の中でやりたかったことは徹底的な媚びです。それも「皆こういうのが好きなんでしょ?」という開き直った媚びです。皆の好きそうなテンポ、曲調、編曲。自分の感情やセンス(それも天才的、そして圧倒的なセンス)は一回封印して、徹底的にリスナー(メンバー含む)の好きそうなことをやってみようという脱センスが目的でした。つまり、この曲は一貫して自分の閃きは使わずに、理論で書いていった曲なのです。この曲は徒花プロジェクトの楽曲の中でも、おそらく一番人気でライブで演奏しない日は2年間でほぼありませんでした。また、フェスなどの演奏後の物販の時なども初見のお客様から「ライ麦畑で抱き締めてが入ってるCDはありますか?」と訊かれる回数がとても多かったです。YouTubeにアップされている徒花のライブ動画でも再生回数が一番多いので、やはり一番人気があるのかなあと勝手に思い、ニューアルバムのタイトル曲にまで成長したわけです。
 もう一つ、この曲でしたかったことは徹底的なパロディです。タイトルもサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のパロディですし、何処かで聴いたことのありそうなメロディ、ライ麦畑でつかまえてに出て来るキャラクターや設定をモチーフにした歌詞、間奏中のリフレーズはジャズの名曲「インザムード」のイントロを意識しています。更にピアノソロ後のサックスソリは「不思議の国のアリス」のメロディを丸々借り受けています。皆の好きなものを詰め込んでいったら「ライ麦畑で抱き締めて」という曲になりました。作曲した当初、僕はこの曲があまり好きではありませんでした。自分のセンスを全く使わずに書いたからです。でも、何回も演奏するうちに段々と好きになっていきました。演奏している最中、お客さんの楽しそうな顔を間近で何度も見られたからです。あ、そうか、僕はお客さんが喜んでくれたら満足なんだなと気付かされた曲でもありました。聴きどころまで辿り着けなかったなあ。とりあえず今回はこの辺で。