いや、変な話なんですけどね。十月の中頃から、なんかずっと元気が出ないんですよね。秋が深まって、夏の疲れを深刻に引きずっていることに気が付いてしまったからかもしれないし、奥村愛子さんのアルバム『ストライプ』が滅茶苦茶かっこいいアルバムだったからかもしれないし、単純に体調が悪いのかもしれません。特に嫌なことがあるとか、そういうわけでもないんだけど、何かがずっとモヤモヤしているような感覚がずっとあるような、ね。

 ある朝、僕が目を覚まして、まだ起き上がるほど何かに追われているわけでもなかったので目を閉じたまま、布団の温もりを楽しんでいました。そう、ベッドの上でころついていたわけです。そうすると、外から何やら男性の声が聞こえてくる。どうやら、喧嘩しているようで「おめえがわりいんだろうがクソが」とか「うっせーんだよカス」とか「やんのか」とか「来いよ」とか言ってる。朝から怖いなあと僕は目を閉じたまま、ぼんやりとそれを聞いていたわけですが、段々と声が近付いてきて、あれ? 僕の家の前くらいまで移動してきてないか? みたいな感じで声がどんどん大きくなってきて、「お前も本当は分かってるんだろ?」とか「謝れよ」とか「いいから早くしろよ」とか、ずっと聞こえてて、僕は段々イライラしてきて、普段だったら絶対言わないのに、家の中に居ることをいいことに「うるせえっ」と声を出したんですね。自分が想像していたよりも大きな声が出て、そうしたら、外から聞こえてたはずの怒声が消えたんですね。雀がちゅんちゅん鳴いてたりして。で、僕は唐突に理解したわけです。あ、さっきの声、頭の中からしてたわ、と。あれは夢だったのかなと少し思ったりもしたんだけど、その後起き上がってアルカリイオンの水を飲んだわけだから絶対に現実で、現実だって思うと頭の中から声が聞こえてきた自分になんか引いちゃったりして。

 それからは変な声はしなくなったんですが、一週間後くらいに、寝ていたら耳元で蚊の羽音がしまして、飛び起きるなんてことがありました。足と腕を何か所か刺されていたのでどうやら現実だったようです。空中を飛んでいる蚊を叩き潰して無事に平穏が帰ってきました。で、問題はその夜でした。また羽音で目が覚めるんですね。だけど、今度はいくら探しても蚊の姿が見つからない。あれ、幻聴かな? 嫌だなあ。あとは来客を知らせるチャイムの音ですね。ピンポーンてやつ。基本的に、僕は誰が来ても居留守を決め込むタイプなのですが、繰り返しピンポンしてくる人がたまにいるんですよね。僕はアポなしで私有地に入ってくる人は怖いので相手にしませんよ。何かネットで注文してて心当たりがあればちゃんと出ますけどね。というわけで、それからはピンポンの音の幻聴が聞こえたりしてね。全くどうしちゃったんでしょうかね? やっぱり秋だからかな。それからは頭の中から声が聞こえないように沢山本を読んでいます。一日に一冊くらい。そしたら、誰の声も聞こえなくなりました。僕はきっと具現化系で後天的に特質系に変わるタイプでしょう。あ、ハンターハンターの話です。全く関係ないんですけど今回のコラムで100回目みたいです。変な話でごめんね。ごきげんよう。