さて、というわけで今回で新曲たちのセルフレビューも最終回ですね。前回のコラムで書いた通りですが、僕の中で『地獄』という言葉が非常に意味を持った大切な言葉になったんですよね。曲はわりとすぐに仕上がったんですけど。この曲はなかなか歌詞が書けなくて、一か月くらい掛かってしまいました。タイトルも付けてなくてそれまで『新曲5』とずっと呼ばれていたわけなんですが。
歌詞をちゃんと入れられたのは大分県の別府にある観光地にプライベートで出掛けられたのが大きかったですね。というか、それが全てです。別府は温泉の名所として知られているんですけど(ちなみに僕の故郷の群馬県も温泉の名所)、地獄巡りと言われる観光地がありまして、赤い温泉とか水色の温泉とか白い温泉を観て回れる観光がありまして、僕はレンタカーで青い温泉と赤い温泉を観てきました。本当に綺麗でいい匂いがして、街並みも穏やかでヤシの木とか生えてて、ずっと其処に留まりたくなるような風景がずっと続いていました。そこで見たこと、感じたことがなければきっと書けなかっただろうな、なんて今になって思うわけです。
歌詞の中の主人公の僕は、よく眠れなくて嘘を嫌っていて言葉を持て余しているのです。ああ、まるで実際の僕みたいだなって思いながら今改めて聴いています。大切な誰かがいなくなってしまうことは僕の人生の中ではいつも地獄なのです。だけど、不思議と時間が経てばその地獄も遠くなってしまうものですね。苦しみも怒りもだんだんと和らいで、だけどほんの少し心に残っている澱のようなものが書きたかったんじゃないかなあ、と。歌詞の中でも『君に伝えたいことも忘れたよ きっとそれで良かったと思うんだよ』と言っていて、言いたかったことも、伝えたかったことも、全部は伝えきれなくて自分の中で消えてしまうんだな、なんて今の僕は思うわけだけど。皆さんは、なんか深いな、及川さんって天才だなって思って頂けたら万事おっけーでございます。この曲の中では『森を抜ければ別の地獄さ』って部分が僕は一番好きなんだけど、青い地獄から赤い地獄へ向かう途中に森を車で走ったのをそのまま書きました。それがなんだか人生みたいだったんですよね。結局、生きてる限り地獄巡りなんだなって。だから開き直って地獄を楽しもうぜって。少しは強くなれたかな。聴きどころはやっぱりアルトサックスのソロと曲の最後のエンディング感じゃないでしょうか。三曲ともいい曲です。皆さん買ってね、何度も聴いてね。御機嫌よう。