今週は洋平さんの話。と、唐突に言われても何のことか分からないでしょう。僕とキーボード越智くんが出会ったラテンバンドにいたテナーサックスの先輩が洋平さん。僕以外のメンバーは昔からの仲間で、僕だけしょんぼりしていると話し掛けてくれるのはたいてい洋平さんか越智くんでした。越智くんは未だに徒花プロジェクトにサポートできてくれた人、リハトラ(練習を手伝ってくれる人)の人に、気さくに話し掛けているのを見て、本当は僕の仕事だなと思いつつ任せています。

 去年の5月のことです。寺田くんがリハーサルを休むので、テナーサックスのリハトラを探していました。その時に、しばらく会ってなかったので洋平さんをお誘いしました。というのも、僕は洋平さんのテナーサックスがすごく好きなんですね。相変わらず滅茶苦茶いい音と派手なフレーズでした。そして譜読み早し。リハーサルはいつも通りに終わって、いつもの餃子屋へ。この日のランチメンバーは僕、越智くん、洋平さんの3人。

 この日は結構長く飲んでたので、会話を全て再現することはできないんですが印象に残った話を少しだけ書いてみたいと思います。

 音楽の辞め時について話していたのです。「洋平さんは結婚してて、子供も居て音楽がちゃんと続いているのが凄いですね。だいたい、皆どっかのタイミングで辞めちゃうじゃないですか?」と訊いたのです。すると洋平さんはシークワーサーサワーをぐいっと飲んで、「音楽に辞め時はない」って僕に言うんですね。それなりに酔ったし、もうとんでもなく感動して、今日この人呼んでほんとに良かったと思って。「SNSでバンド解散します、とか、次のライブで楽器辞めますって宣言してる人を見ると悲しくなるんだよね。だいたい、おめーそんな引退宣言するほど活動してんのかよって思うし、バンド解散とか言ったって、売れてないんだから、やってないのと同じじゃん」って続けて。

「じゃあ洋平さんはずっと辞めないんですね?」って僕が訊いたら「俺は辞めないよ。いつか出来なくなっちゃう日が来るかもしれないし、練習出来なくて下手になるかもしれないけど。辞めないよ」って。

 きっと洋平さんはこの台詞を覚えてないだろうし、越智くんも忘れてるだろうけど、妙に僕の胸には刺さってるんだよね、この台詞。

 今週は僕が洋平さんにそろそろ会いたいって話でした。