酔いどれた頭にイントロとサビのフレーズが、そっと降ってきました。辛ければ辛いほど、上手くいかなければ上手くいかないほど、音楽の神様は僕に素敵なフレーズを授けてくれます。「ほら、これをやるからあと少しだけ生きてみろよ」って言われているような気分になりながら、仕方なくギターのチューニングを始めるのです。暑くて仕方なかった去年の夏に怨念のこもったこの曲を作ることが出来て本当に良かった。『ライ麦畑で抱き締めて』とか『夏の過ごし方』とかで徒花プロジェクトを好きになってくれた方には、もしかしたら作風を誤解されてしまっているのかもしれませんが、本来の僕は陰鬱なメロディセンスの持ち主なのです。僕の陰気な部分、ウエットな部分が存分に発揮出来てた曲になったと思います。
歌詞はいつかの失恋について書いてみました。失恋というよりは喪失に近いような気がするのですが。そんな歌ばかり書いていますけど、今回は、全てから取り残されてしまう様を力を入れて書きました。実際にずーっと取り残されていて、幸せな時間は一瞬しかなくて、僕は思い出すことしか出来なくて、ああ、なんか僕みたいだなって思いながら、歌詞もすぐに書き上げてしまいました。曲を作って歌詞まで書いて、いつも思うのは、こんなことしたって何にも元には戻らないんだっていう絶望なんですよね。一生懸命作って、唄って、でも結局あの子は帰ってこないし、僕は何処へも行けないんだっていう元も子もない悲しさなんですよね。他に何か大切なものが出来ても、違うことは上手くいったとしても、あなただけはもう手に入れることは出来ないっていう。それでも、曲を作らなくちゃと思うのは、それが本当に起こった出来事だと僕だけは覚えてようと思うからなのかもしれませんね。そう、精神的リストカットみたいな。僕は手首を切ったりしないけど、何かを思い出すことによって、心をズタズタにすることによって、少しだけ生きた心地がするのかもしれません。こりゃ、静かに暮らせねーわって思いながら。笑
聴きどころは勿論ギターイントロ&ソロですね。谷口さんは百テイクくらい録音し直したらしいですよ。正確な数字は忘れてしまいましたが。そして、サックスソリ。メロディを引き継がせたら最強のこの二つのパートと、あとはやっぱりリミットギリギリまで激しく唄った僕の怨念を聴いて頂けたら。僕はいつまでもあなたのいた四月に取り残されていたいのだけど、元居た場所に帰らなくちゃ。なんて、あの時の気持ちはCDをリリースしたら供養されるのかな。御機嫌よう。