そんなこんなで紆余曲折ありまして、書き上げた曲が『愛と平和』でした。メジャーキーとマイナーキーを行き来するエイトビートの曲が作りたいっていうのが音楽的発想の始まりですね。明るい曲とも暗い曲とも思われたくなかった。個人的には徒花プロジェクトの様式美を踏襲しつつ、今までより一歩先に行くようなイメージで全体の構成をしました。バンドアレンジ的にはスパッと決まることが多いのですが、この曲に関しては思いの外、決まりきらないことが多くてアレンジ難産だったように思います。スタジオで揉めるシーンもあり「じゃあ、もう違う曲書くからこの曲やらなくていいや」とまで発言したので、このように無事にタイトル曲として形になってほっとしています。メンバーに自分の思惑を伝えるっていうのはなかなかにしんどい作業でした。そして他のメンバーの思惑を受け入れていくというのも、この曲に関してはしんどかったのです。というわけで、収録曲の中で一番議論することが多かったのがこの『愛と平和』だったんじゃないかな、とあとになって思うわけです。
歌詞に関しましては、唄い出しの『思うことは解けない謎々みたい』という部分にこの曲の、いや、僕の思想の全てが詰まっているように思われます。愛について考えるとき、そこにはどうしても憎しみの影が付き纏います。同様に平和について考えるとき、そこには戦争の影が付き纏います。美しい言葉、美しい考えの裏側にはいつもコインの裏側のようにネガティブな面があるのです。視点を変えていくことによって、優しさの意味合いも変わってきます。僕に優しくしてくれたあの人が、他の人には優しくなかったり、またはその逆だってあるのです。人を殺すような人間も自分の子供が可愛かったりとか、なんというかそういう曖昧な部分について悩みに悩み抜いて歌詞を書きました。
現時点で、「あなたにとって愛と平和とは?」と訊かれたら「僕には与えられないけど、誰かの為に願うもの」ときっと答えるでしょう。それが正解かは分からないけど、少しだけ個人的な哲学のその先に行けたような気がする詞になりました。
さて、聴きどころですが、この曲はやはりグランドピアノソロですね。キーボードではないのです。グランドピアノなのです。僕の発注した通りに「東京から大阪までノンストップで高速道路を走り抜ける様なソロ」を弾いてくれたと思います。そして、そのあとのサックスソリ、最後のサビ、疾走感を失わず駆け抜ける様な曲になりました。発売されましたら、是非、ご確認ください。御機嫌よう。