完全復活というわけでもないのですが、少しずつ元気になってきたのもあって、また少しずつコラムも書いていこうかと思います。僕は今、夏休みということにして作曲を放り出して旅に出ようと思っていたのですが生憎の台風で何処にも行けず、結局のところ、自分の心の中を旅することになったわけです。さて、今回は『失恋』について書こうと思います。

先日、友人(一方的に僕が思っているだけかもしれないけど)から「失恋した」旨の連絡が来ました。失恋と一言で書いてしまえる程、簡単な内容ではないと僕は思うのですが、読んでくれる方に伝わりやすいように便宜上失恋という言葉を使わせて頂きますね。
 喪失、失うことについて。それは自分の中の一つの主題であり、曲を変え言葉を変え、何度も自分の作品の中で取り上げてきました。楽曲の中で、その登場人物は時に勇敢に、時に成長せず喪失と向き合っていくわけですが、実際の僕の場合それを受け入れるのにとても時間が掛かってしまいます。くよくよした性格なもんでね。

 考えてみれば不思議なもので、初めは0だったものが何の因果かやがて1になって、段々とかけがえのない存在に成長している。初めから存在していたわけではないのに、恋人が居なかったゼロの状態に戻るだけなのに、それがどうしても受け入れられない。誰かが「時間が解決するよ」とか言ってこようものなら「お前に何が分かる!うるせえバカ」と思ってしまいますよね。「止まない雨はない」とか「明けない夜はない」とかそんな言葉もありますけど、「今、なんとかしろよ!」みたいなね。「雨が止むのも、夜が明けるのも待てねえ程苦しんでんだクソが」的なね。僕は失恋なんかしようものなら、ノート一冊分くらい恋人への気持ちとか今の自分の気持ちとか書き殴ってしまいますけどね。思い出とか印象に残ってる台詞とか、長い長い手紙とか書いてみたりね。どうせ出さないのにさ。曲を作ったらいいじゃんって思う方が居るかもしれないけど、曲にするにはそれなりに時間が掛かるような気がします、少なくとも僕は。すぐに曲にしちゃう人は何というか僕からすれば軽薄な人かな、まあタイプは人それぞれですが。

 自分が今までどんなふうに過ごしていたのかを忘れてしまって、急に何をしたらいいのか分からなくなったり、携帯電話が鳴らないことになかなか慣れなかったり、恋人の口癖がいつの間にかうつっていたことに気が付いてしまったり、ね。寂しさはふとした瞬間に訪れる。それから、「あの時こうしていれば」とか「出会わなかったら良かった」とか、恋人と過ごした時間は無駄だったんじゃないかとか、考え込んで弱っていく。でも、それでいいのかなって思ったのです。次週に続く。